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「人を幸せにする発明家になりたい」。小林製薬の新製品開発を20年手がけた社員が話す、アイデアの生み出し方

小林製薬のnoteを立ち上げるにあたって、はじめに話を聞いてみたい社員について編集部で議論したところ、満場一致で選ばれたのが奥山さんでした。

コーポレートスローガンに「“あったらいいな”をカタチにする」とあるように、小林製薬は、世の中にこれまでなかった製品を生み出すことを大切にしています。

そこで、2003年に入社して以来、これまで20年にわたり小林製薬の製品開発を手掛けてきた奥山さんに、小林製薬が新製品開発で大切にしていることを話してもらおう、というのがこのnoteの趣旨です。

いま、小林製薬では全社を挙げてDXを推進しており、2023年1月にDX推進グループを立ち上げ、奥山さんは課長にあたるグループ長を務めています。新製品開発の極意だけでなく、小林製薬の魅力や、小林製薬におけるDXの現状を、同グループで働く卷尾(まきお)がインタビューしました。

このnoteは、アイデアの出し方を学びたい人や、同じようにものづくりをする企業のみなさん、また、DXについて考えたい多くの方にも、役立てていただける内容になったと考えています。

まずは、以下の目次を眺めていただきつつ、気になる見出しだけでも構いませんが、ぜひ、最後まで読んでいただけると嬉しいです。


プロフィール

※所属は取材当時のものです。

奥山さん:2003年に研究職で小林製薬に入社。2004年にマーケティング職に異動し、以来、2022年まで新製品開発に携わる。2023年1月よりDX推進グループ長に。私生活では、小学生の息子2人と遊ぶのが趣味(妻に3兄弟と言われる)。目下、デジタル知識のリスキリングに邁進中。


卷尾:ソフトウェア開発や外資系日用品メーカーを経て、2014年キャリア入社。入社後はコンシューマーリサーチ職に従事し、2023年よりDX推進グループに。

卷尾:
今年の1月にDX推進グループが立ち上がって、一緒に働かせていただいていますが、同じグループになるまでは 仕事で深く絡んだことはなかったですよね。まだご一緒して半年程ですが、奥山さんが語られる言葉の端々から「小林製薬らしさ」を感じるので、今回は色々お伺いしたいとインタビューをお願いしました。
 
奥山:
僕はDX推進グループのグループ長を務めてますけど、デジタルには本当に疎いからグループのみんなには日々助けてもらってます(笑)
 
卷尾:
デジタル関連の話はまた後半で伺わせてください(笑)
まず奥山さんが小林製薬に入社された頃のことを少しお伺いしたいんですが、就職活動時に小林製薬のどんなところに魅力を感じたんですか?
 
奥山:
大学で化学工学を専攻していたので、一般的には推薦をもらって製造畑に行くという進路が多かったんです。だけど、僕はいろんなことを試してみたくて。子どもの頃から人を幸せにする発明家になりたいっていう夢があったこともあって、本当に自分がやりたいことをできる企業はどこだろう?とたくさんの企業を受けました。

「君の夢を実現させるんやったら、間違いなくうちの会社が一番や、保証する」

卷尾:
そこで小林製薬に出合ったんですね?
 
奥山:
そう、いろんな企業の選考を受けていくなかで、当時の社長に僕の夢をお話しさせてもらったら「君の夢を実現させるんやったら、間違いなくうちの会社が一番や、保証する」って言ってくださって、それが決め手になりましたね。もうこの日のことは昨日のことのように覚えてます。

卷尾:
それはすごいエピソードですね!当時、小林製薬でこんな仕事がしたいといった夢はありました?
 
奥山:
やっぱり当時から新製品開発はしたかったですね!例えばゴッホやピカソといった世界の名画から香りが出るような芳香剤とか、開いたらトイレの形に広がる携帯便座シートとか。当時はスケールの大きな製品というよりは、日々のお困りごとを解決したり、くらしを良くするようなものを作りたいって考えていた記憶があります。
 
卷尾:
なるほど。人を幸せにしたいという奥山さんの夢とも親和性が高いですね。入社当時は研究職をされてたんですよね?
 
奥山:
そう、入社して1年でマーケに異動になりました。マーケは夢だった新製品開発にダイレクトに携われる部署だけど、研究職の面白さがようやく分かってきた頃だったから、嬉しさもありつつ、またゼロからのスタートかとちょっとキツイなと思うところもありました(笑)
短い時間でしたけど、自分で手を動かして物作りをする楽しさをその1年は濃密に味わったんですよね。

「未充足」を探し、奔走し続けるマーケでの日々

卷尾:
マーケに異動されてからはどんな役割を担われていたんですか?
 
奥山:
小林製薬のマーケティング職には、大きく2つの役割があって、1つはブランドマネージャー。担当するブランドの広告や販促を含む戦略を考える仕事です。もう一つはコンセプトやターゲットを考えて、研究や製造とともに製品を生み出していく開発の仕事。配属されてからしばらく僕は食品カテゴリーの開発をやっていました。

奥山が開発に携わってきた製品(一部)

卷尾:
やってみてどうでした?製品開発ってみんな憧れる仕事だと思うんですけど、大変なところはありました?
 
奥山:
いざやってみるともうほんと大変!アイデア出すっていうのはすごい泥臭い作業なんですよ。もうずーっと「何かないか」と考えている感じ。特に当時担当していた食品カテゴリーは小林製薬の中でもまだまだ成熟していない分野だったから、成功体験もなかったしね。アイデア会議も当時はみんな模造紙に殴り書きしながら発表してたり、本当に泥臭くて大変で、面白い時間でしたね。
 
卷尾:
これまでものすごくたくさんアイデアを出したり、製品を生み出したりしてこられたと思うんですけど、一番印象に残ってる製品やアイデアってありますか?

インタビュー終盤の休憩時間、一人の男性が・・・

奥山:
医薬品カテゴリーを担当していた時の『アンメルツ』のロングボトルかな。当時、エステサロンや接骨院がどんどんできてきたり、製品の多様化も進んでたりして、肩こり薬の市場自体が元気なかったんですよ。もう伸びないんじゃないかって、市場自体が肩こってるみたいな(笑)

僕はブランドマネージャーをしていたんですけど、もう毎日悩みまくってて…。そんな時、生活者の方へのグループインタビューをしたものの、やっぱり目新しいコメントは出てこない。ああ、今回もあかんか…と思ってたら、インタビュー終盤の休憩時間に一人の男性が壁の角でグリグリ背中押してるんですよ。「何されてますのん?」って聞いたら「肩も凝るけど、背中も凝るんよ。でも肩こり薬って背中まで届けへんやん?嫁さんに塗ってもらえたらええけどそんな関係やないしな(笑)」って。
 
卷尾:
なるほど!それがアイデアのきっかけになったんですね。
 
奥山:
そう。もうそれ聞いた瞬間みんなでワーっと盛り上がってね。「未充足あった!背中まで届く長い肩こり薬作ろう!」って。そこからは研究と一緒にいくつもプロトタイプを作りました。あんまり長すぎたら、店頭に並べた時倒れるんですよ(笑)。

ようやく製品が完成して、店頭に並んだ時は本当に嬉しかったですね。CMの効果も相まって、ダウントレンドだったのがぐっと回復したんです。これは今でもすごく良い思い出になってますね。

卷尾:
今のお話しを聞いて思ったんですけど、アイデアを生み出す時って色んなことに注視したり、色んな人の意見を取りこぼさないことが大事なんですね。
 
奥山:
自分一人から出る発想なんてたかが知れてますからね。いかに取りこぼさず、アンテナを張り巡らせられるかが大切。自分一人で考えて、生み出せた製品やアイデアなんてほんと少ないですよ。

ターゲットに生々しさはあるか?

卷尾:
2018年からはカテゴリーを限定しない新製品開発の部署のグループ長として、自分以外のアイデアを評価したり、助言する機会も多かったと思うんですが、何か気をつけていたポイント等はありますか?
 
奥山:
人のアイデアを見る時に気をつけていたのは、そのアイデアが机上の空論になっていないか、ターゲットがきちんと浮かぶかというところですね。アイデアを考えた人が実際にどこまでターゲットになり切れているかというところは見るようにしていました。
 
卷尾:
ペルソナの設定を細かくするというようなことでしょうか?
 
奥山:
いや、ペルソナって極論、理解していなくても妄想で書けちゃったりするんですよ。そういうことではなく、いかにターゲットが生々しいか。例えば、「鼻血を止める製品」っていうアイデアが出てきた時、子どもを持つ主婦っていうターゲットはすぐ設定できる。そこから、ターゲットの気持ちをどこまでカラフルに解像度高く語れるか。

子どもがよく鼻血を出す、朝起きたら昨日洗濯したばかりのシーツにまた鼻血がついてる、でも私はもう出かけなきゃいけない、こんな日々が繰り返されて大変…みたいな、ターゲットの設定に生々しさがあるかを重視していましたね。
 
卷尾:
なるほど!ターゲットをそこまで細かく設定するためにどんなことを心がけていらっしゃったんですか?
 
奥山:
ターゲットにはできる限りの手段を使って会うように、僕もしていましたし、グループのメンバーにもそう伝えていました。それこそ今ならデジタルを駆使すれば、オンラインミーティングでもチャットでも簡単にインタビューができますよね。

あらゆる手段を使って、できるだけ詳しく話を聞く、そしてターゲットを掘り下げていくようにはしていました。自分以外のことってやっぱりわからない。だからこそ、色んな経験をして自分以外のキャラクターをたくさん持つっていうことを意識していましたね。

ハイヒールを「履いてみて」わかったこと

卷尾:
そういえば、奥山さん会社でハイヒールを履かれてた時期ありましたよね?
 
奥山:
あったね(笑)。当時、色々アイデアを探っていく中で「ヒールだこ」というお悩みを見つけて。これは何かアイデアや製品につながるかもと思ったんだけど、どういうタイミングでできるのか、どれくらい痛いのかっていう細かい部分は、自分が経験してみないとわからないんじゃないかと思って。

いざ履いてみたら、外に行くとヒールだこはすぐできてめちゃくちゃ痛いし、マンホールにやたらヒールが刺さるし。でも、朝玄関でハイヒールを履くと戦闘モードに入ったような、これまでにない気分を味わえたことも新鮮な経験で、自分以外のキャラクターをまた一つ持てるようになったんですよね。
 
卷尾:
会社内だけじゃなくて、家から履いて来られてたんですか!
 
奥山:
家から会社まで履いて通勤してたよ!社章は外してたけどね(笑)
でもそういう普段しないような経験をしたり、自分が読まないような本を読んだりするのは本当に大切。自分も意識してたし、メンバーにも伝えていましたね。
 

左:ハイヒールを履いていた当時の写真 右:ハイヒール試着中

卷尾:
僕も前職でマーケの仕事をしていたんですけど、奥山さんがおっしゃられた「未充足」っていう言葉は、本当に小林製薬らしい考え方ですよね。一般的にマーケというと、既存のマーケットのなかで自社の製品をどう売るかを重視する気がするんですが、小林製薬はどう売るかではなくて、どこが足りていないか、まだ満たされていないものはないかというのを探しに行きますよね。そこがすごく小林製薬らしくて面白いところだなと思います。

「小さな池の大きな魚」という考え方 

奥山:
そうですね。どう売るかももちろんすごく大事なんだけど、小林製薬はやっぱり「小さな池の大きな魚」という考え方を重視していて、未充足のニーズをいかに発見するかというところに重きを置いていますね。

卷尾:
グループ長になっても、アイデア探しの目線とかアンテナはずっと持ち続けていました?
 
奥山:
それはもう!現場担当の時は自分の担当分野のことだけ考えてたら良かったけど、カテゴリーにとらわれない新製品開発のマネジメントだったので、食品からスキンケアまであらゆる分野のことを考えないとあかんようになったから。アンテナもどんどん広げていかないと、と思って慌てて化粧品検定の資格も取りましたよ(笑)
 
卷尾:
お話しを伺う限り、開発の仕事って本当に大変そうですけど、チームの雰囲気は明るかったですよね。
 
奥山:
考え抜いたアイデアが通らないとか、自分が良いと思ったデザインが不評だったりとか、一筋縄ではいかないことも多いので、ほっといたらすぐにムードが沈んでしまうことになりかねない環境だと思うんです。だからこそ、いかに前向きにモチベーション高めて働けるか、そういう環境を作れるかっていうのはマネジメントとしても意識していましたね。
 
卷尾:
奥山さんネガティヴなこと言わないですよね、常に前向きなイメージがあります。
 
奥山:
今も昔もたまに言ってるよ、知ってるくせに(笑)
 
卷尾:
以前奥山さんがいらっしゃったチームは、老若男女、生え抜き・中途と、とてもバラエティに富んだメンバーでしたよね。他部署にいた僕からもエネルギッシュなチームだなと見ていて思っていました。

DX推進で小林製薬のものづくりをさらに進化させる

奥山:
卷尾さんはDX推進グループの立ち上げから関わってたんだよね?
 
卷尾:
はい、前々職でソフトウェアの開発をしていたこともあって、小林製薬とデジタル技術を掛け合わせてさらに進化させたいなという思いがあって。最近できた社内公募制度を利用してDX推進に関わりたいという意思を伝えました。去年1年かけてDX推進グループの立ち上げ準備をしていましたね。

奥山:
それまでも色んな部署からメンバーを集めたDX推進プロジェクトはあったよね。僕も参加していたけど。
 
卷尾:
そうですね。でも、やっぱりみなさん本業があるので、なかなかスピーディーには進まないところがありましたよね。なので、本腰入れて進めないと、と専任の部隊ができた感じです。今はまだ人数も少ないですが、今年からはCDOとして石戸さんにも入っていただきましたし、これからは採用も進めてもっと仲間を増やしていきたいですよね。
 
奥山:
DXっていうのはすごいビッグワードで、どの会社も何かしないととなってる。小林製薬にもDXと紐付きそうな取り組みがたくさんできているけど、このチームにきて半年間会社を鳥の目で見てみると、個別最適というか部署単位で動いていることが多いなと。なので、会社全体としてDXの方向性を定めるっていうことがまずやらないといけないことですよね。僕もそうだけど、デジタルに対して苦手意識や恐怖心を持ってる社員もまだまだいますしね。

卷尾:
石戸さんと一緒のユニットで働くと聞いた時はどうでした?

奥山:
それはすごい衝撃だったよ!まず石戸さんが小林製薬の社員になるんだ、というのが衝撃でした。最初に顔を合わせたのはDX推進委員会というプロジェクトで、その時石戸さんはまだ小林製薬の社員ではなくアドバイザーという立場だったんです。なので、深くお話しする機会はなかったんだけど、同じチームになってからは色んな話をするようになりましたね。

卷尾:
石戸さんとの会話で印象に残っているものってあります?

奥山:
小林製薬が大切にしている考え方の一つに「カマス理論※」というものがあって。石戸さんとこのカマス理論の話になったとき「自分が新しいカマスになる、これまで仕切りがあると思われていた領域をどんどん突破したい」と話されていたのがとても印象的でしたね。

※カマスと餌になる小魚を水槽にいれ、間に透明のガラスの仕切りを入れる。小魚を獲ろうとしたカマスは仕切りにぶつかり、そのうちに「どうせ無理だ」と捕食を諦めてしまう。仕切り板を外しても、一度諦めたカマスは餌を獲りに行こうとしなくなる。しかし、そこに新しいカマスを入れると餌を獲りに動き出し、それを見ていた元からいたカマスたちも続いて餌を獲りに再度動き出すというもの。

僕は、石戸さんは世界の広さや小林製薬はどう変わらないといけないかというのを伝えてくれる人だと感じています。例えば外部の方々の力をもっと借りて良いんだとか、その力の借り方とか。石戸さんは社外にもどんどん出ていって講演したり、交流されるんです。だから外部の方との連携もスムーズにいく。そういう部分は小林製薬の社員が見習っていかないといけない部分だと思いますね。とにかくいろんな刺激と影響を日々いただいています。

卷尾:
なるほど、確かにすごく色んな知識や知見をお持ちですもんね。それは僕も日々実感しています。一緒に働くようになってから石戸さんの印象って変わりました?

奥山:
石戸さんって見た目はとてもクールに見えると思うけど(笑)、実はとても熱量の高い人で、小林製薬というチームの一員として色んなことを考え、実践しようとしてくれている。今、小林がやろうとしているDXの取り組みに全社員が共感してくれるように、1on1でミーティングしたり、全社員にアンケートをとったりしていますが、それも石戸さんの影響が大きくて。やることはDXなんだけどリアルなつながりや対話をすごく大事にされているなと思います。とはいえ、さっきも言ったけど、やはり急速な変化に気持ちが追いつかない社員もいるし、彼らの気持ちも僕はとてもわかります。デジタル音痴だったしね(笑)だからこそ、小林製薬の社員と石戸さんの架け橋になってお互いのギャップを埋めていくことが僕の役割なんだと思っています。

「奥山さんは、デジタルへの苦手意識が強かったんですよね?」 

卷尾:
デジタルをうまく活用することで、小林製薬のユニークさをもっと発揮できるようになりますよね。アイデアを発想する力がすごく強い会社だからこそ、それを形にできる可能性をもっと増やしていきたいです。奥山さんはこの部署に来るまで、結構デジタルへの苦手意識が強かったんですよね?
 
奥山:
苦手どころじゃないですよ!はじめは、オンラインとオフラインのハイブリッド会議ですら恐怖。画面が共有できなかったり、スピーカーから声が聞こえなかったり、ハウリングしたり…(笑)家でもカーナビやスマートフォンですらうまく使えなくて、子どもに助けてもらってました。
 
卷尾:
理系出身の方って機械やデジタルに強いイメージがあるんですが…(笑)
 
奥山:
イメージで語らない。さっき言った妄想でペルソナ書くなっていうのはそういうことですよ(笑)


 
卷尾:
でも、奥山さんが当初デジタルに苦手意識があったからこそ、そういう人の心も分かって意見をくれますよね。僕はDXってデジタルをただ使えば良いというのではなく、人の心を変えていくっていう部分もすごく大事だと思うんです。デジタル領域の人間ばかりだとそういうことを忘れて突っ走りそうになるところを、奥山さんが指摘してくださるのはとても助かってます。
 
奥山:
そう言ってくれると嬉しいですね。配属が決まった時はすごく不安でしたからね、デジタルが苦手で、務まるんか、会社に貢献できるんかなと。でも社長からも期待していると伝えていただいたし、周囲にも色んなコメントをいただいたりして、僕なりに小林製薬を進化させる一翼を担いたいなという気持ちがあったから。
 
卷尾:
このチームに来られて少しは苦手意識は減りました?
 
奥山:
苦手意識はある一方で、新しいものに触れたり取り組んだりするのは好きなんですよ。だからちょっと面倒とか、苦手だからと食わず嫌いしている人たちに「こんな便利な世界があるんだ!」ということを伝えたい。僕は今まざまざと実感しているところだから(笑)
 
卷尾:
奥山さんは好奇心がすごいですよね。新しいツールが出ると使ってみたくてうずうずされているのが見ていてもわかります(笑)
最近、知ったデジタル関連のサービス等で面白かったものとか便利だったものはなんですか?

アイデアは「量が質を生む」という持論

奥山:
最初は本当ベタなところで、タクシー配車アプリとかフリマアプリに感動しましたね。一番最近だとやっぱりChatGPTかな。今は子どもと遊ぶのにも使ったりしてます。あとアイデアを出すきっかけにも使えるなと。

僕、アイデアは量が質を生むっていう持論があるんです。今まではアナログで製品コンセプトやネーミング案を振り絞って出してたんだけど、今は量だけならChatGPTが出してくれるなと。そこからブラッシュアップさせていくことで、これまでよりもスピーディーに良いアイデアが生み出せるよね。
 
卷尾:
やはり日々の忙しさが理由でデジタルに触れなかったり、苦手意識を持たれてる方もいますよね。
 
奥山:
そうそう。やっぱり忙しいと心の余裕がなくなるから、新しいものに挑戦する気持ちが湧かないよね。そういう根っこの部分を解消することもDXの役割だと思います。
 
卷尾:
デジタルにちょっと手を伸ばしてもらう、そのための後押しをするのが僕らの役割ですよね。

DXの鍵となるのは「人の心をどう動かすか」

卷尾:
奥山さんの目線から見て、DX推進をしていく上での課題ってありますか?
 
奥山:
さっき卷尾さんも言ってたけど、デジタル、DXと言っても結局人が大きな領域を占めるんだなと思っています。デジタルのスキルとかではなくて、人の心をどう動かすかが課題。いくら良いツールやシステムを入れても、使う人のやる気とか心のスイッチを押せないと結局使われずで、役に立たないものになってしまう。
 
卷尾:
そうですね、本当に人の気持ちを変えるっていうところがDXの特にトランスフォーメーションの本質ですよね。
 
奥山:
とにかく今はみんなが何を考えているんだろう、どんなものを必要としているんだろうというのを知るために、事業部長レベルのメンバーと1on1で話したり、グループインタビューでみんなの意見を聞いたり、全社にアンケートを取ったりしています。そうやって話を聞いていくと、みんな危機感や課題意識を持ってるのが分かりますね。
 
卷尾:
そうですね、やってみてわかったんですけど、一人一人の声を聞いたり、DXに対しての我々の考えを透明化して伝えたりといった割と泥臭いことがすごく大事なんだなと僕も実感しています。
 
奥山:
課題に感じているのは共通の部分も多いから、そこをどう改善していくかという伝え方を考えるのが次のステージかなと思っています。
 
卷尾:
新製品開発でもターゲットの気持ちになりきって、生々しく理解できるかが大事とおっしゃってましたけど、DX推進も同様に社員の気持ちを汲んで、理解して進めていくことが大事ですよね。
今はまだ仕組みを整えたり、ツールを導入したりという段階ですが、今後、デジタルが当たり前になったとき、僕らのチームがものづくりの仕事や新製品開発にも関わることってありますかね?
 
奥山:
そうだね、今取り組んでいる諸々が軌道に乗ったら「あったらいいなをカタチにする」何かをデジタルで生み出すことには挑戦したいね。アプリ開発とか。
 
卷尾:
そうですね!やっぱり何か新しいものやことを生み出すのは、小林製薬の大きな魅力ですから、僕らもそれに直接的に関われたらもっと楽しいだろうなと思います。

20年働いたからこそわかる、小林製薬の魅力

卷尾:
奥山さんは入社して20年ほどだと思うんですが、長年働いてきた今、小林製薬の魅力ってどんなところでしょう?
 
奥山:
さっきDX推進の課題として人と言ったけど、この会社の魅力も人ですね。誰かを蹴落としてやろうみたいな人を見たことがないし、みんながお客さまにとっての分かりやすさを本気で大事にしてる。あったらいいなをカタチにするという想いにみんなが真摯に向き合っていると思います。
 
卷尾:
僕も全く同意です。小林製薬という会社が好きな人が多いですよね。企業規模としては大きいんだけど、みんなの距離が近い。大学の研究室みたいな雰囲気もありますよね。すごく情に厚い人も多いですし、みんなが本音で話をしているっていうのを感じます。逆に課題というか、改善点はあります?会社として。

奥山:
そうだな、良いところと裏返しなんだけど、何かピンチや問題が起きた時にすぐにアドレナリン全開でたくさんのアイデアを出して、乗り越えようとする文化がありますよね。人材育成やコストダウン、営業手法とかも。それはすごく小林製薬らしくて良い部分でもあるんだけど、根っこの解決になっていないこともある。そういう部分は変えていかないといけないと思いますね、自戒も込めて…(笑)
 
卷尾:
DX推進グループに来たからこそわかる課題や改善点ってありますか?
 
奥山:
小林製薬って25期連続で増益を達成してて、会社としてうまくいってるんですよね。だから今までのやり方で良いと思っているというか、新しいものに積極的に触れようとしないところはあるかもしれない。それをこのチームに来て、今まで以上に世の中を広い視野で見て、色んな人や会社の方と話すようになって痛感しました。

世の中は広いし、すごいスピードで変化している。僕はこのままじゃダメだと思っていて、もっと変わっていこうという意識をみんなに持ってもらいたい。そのために、僕らのチームがムードの醸成や世の中の最新情報を伝えていくっていう役割は果たせるんじゃないかと思ってる。
 
卷尾:
確かに、その課題に対しては僕たちの仕事が大いに貢献できそうですね。
 
奥山:
そのためにあるグループなんじゃないかというのが、この半年で到達した答えでした。
 
卷尾:
では最後に奥山さんご自身はこれからどんな未来を築かれたいですか?
 
奥山:
20年どっぷり新製品開発やマーケティングをやってきて、お客さまに製品を届ける、製品の魅力を伝えることをしてきて、それも大好きなんです。そのうえで今はこの会社自体をもっと魅力的に伝えるとか、会社を内側からより良くすることに興味がわいてますね。だから広報とか人事とかも経験してみたい。
 
卷尾:
これまでと全然違う仕事なんですね!
 
奥山:
あとは、この会社が大好きだけど、60歳になったらスパッと辞めて、大阪城の案内人とか、図書館司書とか、全く違う仕事にまた新しく挑戦したい。そうするとあと15年くらいしかなくて、まずはDX推進を軌道に乗せて、広報やって人事もやってって考えると全然時間が足りない(笑)

そしてやっぱり新製品開発をまたやりたいという気持ちもあります。色んな知識を得たからこそ、戻って役に立てることもあるんじゃないかと。DX推進グループに来たことによって未来の選択肢が増えたような気がします。だから、これからは自分と向き合いながら、その時の自分に正直にやりたいことをできるようにしていきたいですね。
 
卷尾:
貴重なお話しありがとうございました!これから長いお付き合いになると思いますが、よろしくお願いします。
 
奥山:
こちらこそ!僕のことは、上司じゃなくて同志だと思って接してください(笑)

ここまでご覧いただきありがとうございました!
次回8月分は記事内にも登場したCDO石戸のインタビューを予定しています。ぜひこちらもご覧ください。

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