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小林製薬のDX方針をまとめました

小林製薬は、2023年8月8日(火)9日(水)に報道関係・投資家の皆さんを対象にDX方針説明会を開催し、DXの絵姿やロードマップを発表しました。このnoteでは、説明会での発表内容をベースに、小林製薬が目指すDX推進の意図と戦略についてお伝えします。

以下の資料も合わせてご参照ください。
DX方針発表リリース
DX方針説明会資料
DX方針説明会資料(スクリプト付/HTML)


2023-25年の中期経営計画について

小林製薬では、パーパスに「見過ごされがちなお困りごとを解決し、人々の可能性を支援する」を掲げています。将来にわたってこのパーパスを実現し企業としても成長し続けていくために、「2030年のありたい姿」を描き、中期経営計画を策定しています。

出典:中期経営計画策定に関するお知らせ(2023/2/14)

2023-25年の中期経営計画においては、戦略骨子の1つに「未来の小林製薬の基盤を作る」取り組みとしてDX推進を掲げており、全社をあげて推進しています。

出典:2022.12期4Q 決算説明会資料(2023-2025年 中期経営計画)

CDOユニットの新設とDX推進の意図

中期経営計画に基づき、2023年1月から社長直下にCDOユニットが新設されました。従来のシステム部と経営企画部のDX推進担当をDX推進グループとした約70名ほどの組織で始動し、ユニット長として2021年から小林製薬のDX戦略のアドバイザーを行っていた石戸が入社しました。

組織体制の変更

小林製薬ではこれまでも、2008年に創業事業である卸事業を売却し製造販売事業に集中、積極的なM&Aなど、ビジネスモデルを果敢に変革しながら成長を続けてきた歴史があります。

製品開発においては、環境変化による新たなニーズをいち早く捉え、“あったらいいな”をカタチにするというスローガンのもと、さまざまな社会課題や環境変化の半歩先、一歩先を見据えた製品開発を行ってきました。 

昨今では、デジタルを伴った社会の環境変化が加速度的に進んでおり、顧客データ、ヘルスケアデータの活用やオンライン診療の普及に加え、ウェアラブルデバイスの普及、仮想空間技術の進化などが起こっています。

これらの環境変化を小林製薬では大きなチャンスと捉えており、これもDX推進を行う大きな理由となっています。

小林製薬の特長を生かしてDXに取り組む

小林製薬は、環境変化をアイデアにするのが得意な会社です。1982年から全社員提案制度を運用しており、昨年は全社員から約57,100件の製品や業務改善のアイデアが創出されました。

40年以上も続くこのアイデア創出は、小林製薬の企業文化であり、独自の仕組みとして根付いています。結果的に、現在157ブランド、1,017アイテムもの多種多様な製品をご提供することにつながっており、この特徴を活かしたDXの取り組みを進めていきます。

あったらいいなDXの全体像

あったらいいなをカタチにするというブランドスローガンの中で、DXを進める全体像、絵姿を下記に図で示しています。

小林製薬では、大きく2つ「顧客体験」「従業員体験」の向上を実現させるべく、すべてのステークホルダーとの接点や体験をDXで改革していくために、3つの戦略を推進していきます。

戦略01 あったらいいな開発のDX

一つ目の「あったらいいな開発のDX」は、データやAIを活用したアイデア創造の取り組みです。

これまでアイデア創造のためのインプットや評価は、各社員自身や周囲の経験、情報などが主な情報源でした。もちろんリサーチも行っていましたが、課題として新規性の高いお困りごとを見過ごしてしまったり、多様性に欠けてしまう部分もありました。

そこで、人力だけでは見過ごしてしまいがちな”お困りごと”をAIの活用でスムーズに発見するため、「あったらいいなAI」の開発を進めています。

具体的には、小林製薬の特徴である全社員から集まる約57,100件のアイデアと共に、世界中のSNSやトレンド情報も簡単にインプットできるような仕組みを作ります。

それらの集積した情報を「あったらいいなAI」に素早く簡単にインプットすることで、見過ごしてしまいがちなお困りごとにお応えできる有望なアイデア創出を行っていきます。

あったらいいな開発のDX

また、デジタル新規事業にも取り組みます。IoTやWebアプリ開発などをテーマに捉えながら、多様なアイデアからまず一つ成功事例を生み出したいと思っています。

2023年度からは、ヘルステック開発グループという新組織、および新たな会議体を設け、来年の1月には、デジタルに関わる新規サービスのディレクションや開発を行う新規サービス開発グループも設置される予定です。

組織化を進めると共に、社内での育成強化や新たな人材の採用を行い、Webアプリサービスやデータを活用したデジタルサービスを創出していきます。

今後の組織体制

また、社内ではすでに生成AIなど新しいツールをアイデア創出に活用するため、8月22日に実施された「全社員アイデア大会」では、ChatGPTを活用するなど、全社員がDXや新しいテクノロジーに触れる機会を作っています。

戦略02 全社員でDX

2つめの戦略が「全社員でDX」です。こちらは下の図にある4つのEを主要アクションとして推進していきます。

4つのE

Education(人材育成)では、社員それぞれが自分にフィットする学習機会を提供していきます。例えば、どんなタイミングでもデジタル学習ができるオンライン学習プラットフォームやプログラミングの研修、プロトタイプ研修などがあります。

また、IT企業やベンチャー企業に留学のような形式で越境学習する機会や、CDOユニット内では社内副業も実施していく想定です。

すでに、製品開発担当およびIT担当の社員を対象にデザイン領域におけるコンサルティング事業を展開するIDEO社が提供するプロトタイピング研修『プロトタイプの学校 for Biz』を実施しています。

Environment(実践環境の整備)では、世界最大級のビジネスSNSアカウントであるLinkedInの開設や、皆さんに今ご覧いただいているこちらのnoteを通して、小林製薬の魅力をお届けし、デジタル人材への情報提供を行っていくほか、今後は魅力的で生産性の高い環境づくりとしてオフィスの増床や改修も想定しています。

小林製薬公式LinkedInはこちらからご覧ください。
 
Engagement(情報発信、ブランディング)では、デジタル人材が注目するメディアやイベントに積極的に参加し、新たな人材や小林製薬に共感し、協業してくださるパートナー企業様との出会いを増やしていきます。

今後、登壇する予定のイベントやメディア

Employment(採用、オンボード、評価)では、主にデジタル新規事業を遂行する人材の採用を強化していきます。これまで各社員が築き上げてきた製品開発・製造のノウハウ、スキルをより活かし、スピーディーに製品開発、事業創造することが大きな目的です。

現在を新規サービスやDXの立ち上げ期と位置付け、「0→1」をつくるスキルや経験を持ち、スピード感をもって具現化をコミット、推進できる人材・チームをデジタル人材の採用や開発を得意とするSun Asterisk社と協業するなどして積極的に採用していきます。今期はすでに10種以上の募集職種を公開しており、引き続き体制を強化していく予定です。 

募集職種の最新情報については、こちらからご覧ください。

戦略03 生産性向上


 DX戦略の3つめは、生産性向上です。ここでは従業員体験の向上によりDXを推進することを目的とし、下記の3点を推進していきます。

生産性向上の3つの軸

1.働き方改革とDWP充実では、時間や場所に捉われない働き方の推進や、ビジネスアプリケーションの利便性をより高めたり、クラウドサービスの活用を推進するなどして、業務削減や従業員体験の向上を目指していきます。

2.全世界で繋がる情報基盤は、市場ビジネスの変化に対する柔軟な基盤(開発基盤はローコードを導入)や構築の展開をしていきます。現在、小林製薬には国内外に約3,700名ほどの社員がおり、今後も海外拠点を拡大していく想定です。それに伴い、各拠点や社員からの問い合わせやデータ管理のシステムを整え、より円滑にすることで世界規模での生産性向上を図っていくことを目的としています。

3.最先端のセキュリティは、今後の海外展開の拡大を見越した情報セキュリティ強化、工場や研究領域も含めた制御セキュリティの拡大、お客様に安心してサービスを利用していただける製品・サービスセキュリティの拡大の3つの軸で対策を強化し、時流を捉えた強固な守りの体制を築いていきます。

風土改革

風土改革の取り組み

DXを推進するためにデジタルの推進だけではなく、風土の改革も重要だと捉えており、様々な施策を実施しています。

1on1による成長対話や、心理的安全性の研修はすでに実施を始めており、今後は外部のIT企業やスタートアップ企業の見学や講演会を通して、知識や知見を深める機会を設けていく予定です。また、従業員が会社の未来を語る場も積極的に創出していき、社員同士の交流や意見交換の場も増やしていきます。

また、2022年1月から副業制度と服装自由化を導入し、イノベーションの創出を制度面でも支援しています。

DX推進のロードマップとビジョン

これらの戦略を下記の4つのフェーズ、順序で実施していきます。

DXロードマップ

そして、3年以内には関西でデジタルの仕事をするなら小林製薬、2030年にはメーカーでデジタルの仕事をするなら小林製薬と認知される状態を目指していき、関西の様々な企業様とともに関西から世界を盛り上げていける企業へと成長していくことが、私たちの描く未来です。

DX推進の目指す未来

ここまでご覧いただき、ありがとうございました!次回は、戦略01でご紹介した「chatGPTを活用した全社員アイデア大会」を予定しています。ぜひこちらもご覧ください。



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